お隣の犬の鳴き声にお困りなのですね。契約書でペット禁止にも関わらず、大家さんの許可で犬が飼われ、鳴き声が絶えない状況、本当にお辛いと思います。静かな環境を求めて選んだ物件だっただけに、そのお気持ち、お察しいたします。今回は、弁護士の視点から、この状況を打開するための具体的な対策を解説いたします。
自分は一戸建ての小さな貸家に住んでいます。敷地内には同じ大家さんの貸家が数軒建っています。5年程前から私が住み始め、お隣が一年ほどしてから越してきました。その隣家が3年程前から犬を飼い始めました。貸家なので当然契約書があり、その中にはペットを飼ってはならない と明記されています。私が越してくる時に不動産屋には「静かな環境を希望します」という事で決めた物件でした。本当に静かな良い所なのです。その隣家の犬は家の人が出入りするたびに鳴きます。吠えます。鳴きつづけます。不審者に対して鳴くのではなく、飼い主に対しても鳴くのです。ちょっと我慢ならず2年程前不動産屋へ申し入れしました。ペット禁止のはずの隣の家から犬の鳴き声がする と大家さんいわく「躾のされている犬なので許可した」との返事でした。あと、それとなく注意してみるとも言っていました。今現在、申し入れした時と全く変わらず人の出入りのたびに鳴いています。隣人の注意する言葉も聞こえませんし、こちらに謝罪もありません。いいかげん我慢できないので何か対策をしたいのですが良い方法はありますか?資金的に早急な引越しはできません。希望は隣家+大家+不動産屋に引越し資金を出してもらい別のところへ引越ししたいです。証拠にと思い携帯のムービーに録画しています。(相手からは見えないように室内からですけど・・・)
まずは状況を整理しましょう
まず、今回の問題点を整理してみましょう。ポイントは以下の3点です。
- 契約違反の可能性:賃貸契約書にペット禁止と明記されているにも関わらず、隣家が犬を飼育している。
 
- 騒音問題:犬の鳴き声が頻繁で、生活に支障をきたしている。
 
- 大家・不動産屋の対応:申し入れをしても状況が改善されない。
 
これらの問題点を踏まえ、具体的な対策を検討していきましょう。
対策1:証拠の収集と記録
現状、動画を撮影されているとのこと、素晴らしいです! しかし、より効果的な証拠とするために、以下の点を意識して記録を継続しましょう。
- 日時と状況:犬の鳴き声がした日時、時間帯、鳴き声の頻度、継続時間などを詳細に記録する。
 
- 騒音レベル:可能であれば、騒音計アプリなどを利用して、具体的な騒音レベルを記録する。
 
- 生活への影響:犬の鳴き声によって、どのような影響を受けているのか具体的に記録する(例:睡眠不足、集中力低下、ストレスなど)。
 
これらの記録は、後々、大家さんや不動産屋と交渉する際、または法的な手段を検討する際に非常に重要な証拠となります。
対策2:内容証明郵便で通知
これまでの経緯と現状の問題点を整理し、大家さんと隣家宛に内容証明郵便で通知を送付しましょう。内容証明郵便は、送付した内容と日付を公的に証明できるため、後々の証拠として有効です。通知書には、以下の内容を記載しましょう。
- 契約違反の指摘:賃貸契約書にペット禁止と明記されているにも関わらず、隣家が犬を飼育している事実を指摘する。
 
- 騒音問題の訴え:犬の鳴き声が頻繁で、生活に支障をきたしている状況を具体的に説明する。
 
- 改善要求:犬の飼育をやめること、または鳴き声がしないように対策を講じることを要求する。
 
- 期限設定:改善を求める期限を明確に設定する(例:2週間以内)。
 
- 法的措置の可能性:期限内に改善が見られない場合、契約解除や損害賠償請求などの法的措置を検討する旨を記載する。
 
内容証明郵便の作成は、弁護士や行政書士に依頼することも可能です。専門家に依頼することで、より法的効力のある通知書を作成できます。
対策3:第三者への相談
大家さんや不動産屋との交渉が難航する場合、第三者機関に相談することも有効です。相談先としては、以下のような機関が考えられます。
- 弁護士:法的観点からアドバイスを受け、交渉の代理や訴訟の提起を依頼することができます。
 
- 消費者センター:消費者問題に関する相談窓口として、適切なアドバイスや情報提供を受けることができます。
 
- 不動産相談窓口:不動産に関する専門的な相談窓口として、今回のケースに適したアドバイスを受けることができます。
 
これらの機関に相談することで、客観的な視点からアドバイスを受け、解決策を見出すことができるでしょう。
対策4:調停の申し立て
当事者間での話し合いが難しい場合、裁判所に調停を申し立てるという手段もあります。調停では、裁判官や調停委員が間に入り、当事者間の合意を目指して話し合いを進めます。調停のメリットは、訴訟に比べて費用が安く、手続きも比較的簡単であることです。また、当事者間の感情的な対立を緩和し、円満な解決を目指すことができます。
対策5:引越し費用の交渉
引越しを希望されているとのことですので、引越し費用の交渉も視野に入れましょう。交渉のポイントは、以下の点です。
- 契約違反の事実:ペット禁止の契約に反していることを改めて強調する。
 
- 騒音による損害:犬の鳴き声によって被った精神的苦痛や生活への支障を具体的に説明する。
 
- 引越しの必要性:騒音問題が解決しない場合、引越しをせざるを得ない状況であることを伝える。
 
- 引越し費用の負担:引越し費用の一部または全額を負担してもらうよう交渉する。
 
交渉の際には、これまでの証拠や記録を提示し、具体的な損害額を提示することが重要です。また、弁護士に交渉を依頼することで、より有利な条件で合意できる可能性が高まります。
隣人トラブル解決のヒント:犬の鳴き声問題、弁護士が教える法的知識と対策
犬の鳴き声問題は、集合住宅や近隣住民との間でよく起こるトラブルです。しかし、法律の専門家である弁護士の視点から見ると、解決への道筋が見えてきます。ここでは、犬の鳴き声問題に関する法律的な側面と、具体的な対策について解説します。
騒音規制法と受忍限度
日本では、騒音規制法という法律があり、地域や時間帯によって騒音の基準が定められています。しかし、犬の鳴き声は、騒音規制法の対象となる「工場騒音」や「建設騒音」とは異なり、直接的な規制の対象とはなりません。そのため、犬の鳴き声問題は、民法上の「受忍限度」という概念で判断されることが一般的です。
受忍限度とは、社会生活を営む上で、ある程度の騒音や迷惑は我慢しなければならないという考え方です。しかし、その程度が社会通念上許容される範囲を超えている場合、違法と判断され、損害賠償請求や差し止め請求が認められることがあります。犬の鳴き声が受忍限度を超えるかどうかは、以下の要素を考慮して判断されます。
- 鳴き声の頻度と時間帯:早朝や深夜など、生活時間帯に頻繁に鳴き声がする場合は、受忍限度を超える可能性が高くなります。
 
- 鳴き声の大きさ:騒音計で測定した数値だけでなく、実際に耳に聞こえる音の大きさも考慮されます。
 
- 地域の環境:閑静な住宅街など、静かな環境が求められる地域では、受忍限度が低くなる傾向があります。
 
- 犬種や飼育状況:犬種によって鳴きやすい犬種も存在します。また、適切な訓練や飼育が行われていない場合、鳴き声が頻繁になることがあります。
 
- 被害者の状況:被害者が精神的な疾患を抱えている場合や、仕事に支障をきたしている場合は、受忍限度が低くなることがあります。
 
法的措置の可能性
犬の鳴き声が受忍限度を超えると判断された場合、以下の法的措置を検討することができます。
- 損害賠償請求:犬の鳴き声によって被った精神的苦痛や財産的損害(例:治療費、引っ越し費用)を賠償請求することができます。
 
- 差し止め請求:犬の鳴き声を止めるように請求することができます。
 
- 契約解除:賃貸物件の場合、大家さんに対して契約解除を求めることができます。
 
これらの法的措置を講じるためには、犬の鳴き声が受忍限度を超えていることを立証する必要があります。そのため、証拠の収集が非常に重要になります。
弁護士に相談するメリット
犬の鳴き声問題は、感情的な対立が激しくなりやすく、当事者間での解決が難しい場合があります。弁護士に相談することで、以下のメリットが得られます。
- 法的アドバイス:法律の専門家として、今回のケースに適したアドバイスを受けることができます。
 
- 証拠収集のサポート:どのような証拠を集めるべきか、具体的なアドバイスを受けることができます。
 
- 交渉の代理:相手方との交渉を代行してもらうことで、精神的な負担を軽減することができます。
 
- 法的措置のサポート:訴訟や調停などの法的措置を講じる際に、必要な手続きや書類作成をサポートしてもらうことができます。
 
犬の鳴き声問題は、放置すると精神的なストレスが大きくなり、生活の質を著しく低下させる可能性があります。早めに弁護士に相談し、適切な対策を講じることをお勧めします。
成功事例:騒音トラブル、こうして解決した!
実際に、犬の鳴き声問題で悩んでいたAさんのケースをご紹介します。Aさんは、マンションに住んでおり、隣の部屋の犬の鳴き声に悩まされていました。管理会社に相談しても、なかなか改善されず、精神的に疲弊していました。そこで、Aさんは弁護士に相談し、以下の対策を講じました。
- 証拠収集:犬の鳴き声が聞こえる時間帯や頻度を記録し、騒音計で騒音レベルを測定しました。また、犬の鳴き声によって睡眠不足になっていることを医師に診断してもらい、診断書を作成してもらいました。
 
- 内容証明郵便の送付:弁護士が、隣人に対して、犬の鳴き声を止めるように求める内容証明郵便を送付しました。
 
- 調停の申し立て:内容証明郵便を送付しても改善が見られなかったため、裁判所に調停を申し立てました。
 
調停では、弁護士がAさんの代理人として出席し、犬の鳴き声によってAさんが被っている損害を具体的に説明しました。その結果、隣人は犬の訓練を行うこと、Aさんに慰謝料を支払うことで合意しました。Aさんは、弁護士に依頼したことで、スムーズに問題を解決することができ、精神的な負担も軽減されました。
まとめ
今回のケースでは、まず証拠をしっかりと集め、内容証明郵便で通知することが重要です。それでも改善が見られない場合は、第三者機関への相談や調停の申し立てを検討しましょう。引越し費用の交渉も忘れずに行い、一日も早く平穏な生活を取り戻せるよう、積極的に行動しましょう。応援しています!