ペット禁止物件で犬を預かり、フローリングの腐食が発生してしまった場合、原状回復費用が発生するのは避けられないかもしれません。しかし、請求額70万円は高額に感じる方も多いでしょう。まずは請求内訳を詳細に確認し、妥当性を検証することが重要です。また、立ち会いなしで請求額が確定している点も疑問が残ります。
この記事では、ペット禁止物件での原状回復義務、立ち会いの重要性、請求額の交渉術、専門家への相談など、具体的な対処法を解説します。
都内在住のAさん(30代女性)は、6年間住んだマンションを退去する際、予期せぬトラブルに見舞われました。そのマンションはペット飼育禁止でしたが、Aさんは親しい友人Bさんの愛犬C(トイプードル)を、Bさんが海外出張や急な用事でどうしても世話ができない時に、月に数回預かっていました。
「まさか、こんなことになるなんて…」
Aさんは後悔の念を隠せません。退去後、不動産会社から突然、70万円もの原状回復費用を請求されたのです。原因は、犬Cのおしっこによるフローリングの腐食と、犬の臭いでした。
「フローリングの一部が黒ずんでいて、臭いも染み付いていると言われました。でも、立ち会いもなしに、いきなり70万円って…」
Aさんは途方に暮れました。敷金30万円も預けているのに、一体どうすればいいのでしょうか?
賃貸契約における原状回復とは、借りた時の状態に戻す義務のことです。しかし、これは通常の使用による損耗(経年劣化)は含まれません。例えば、日焼けによるクロスの変色や、家具の設置による床のへこみなどは、家賃に含まれると考えられています。
しかし、ペット飼育禁止物件で無断でペットを飼育した場合や、Aさんのようにペットを預かったことで通常の使用を超える損害が発生した場合、原状回復義務が発生します。特に、犬のおしっこはフローリングを腐食させ、臭いを染み付かせるため、高額な修繕費用が発生する可能性があります。
Aさんのケースで問題なのは、立ち会いなしに請求額が確定してしまったことです。本来、退去時には立ち会いを行い、部屋の状態を双方で確認し、修繕が必要な箇所とその費用について合意するのが一般的です。
立ち会いを行うことで、以下のメリットがあります。
自分の目で部屋の状態を確認できる:不動産会社の説明が一方的ではないか、本当に修繕が必要なのかを判断できます。
修繕費用の見積もりについて質問できる:不明な点や納得できない点があれば、その場で質問し、詳細な説明を求めることができます。
交渉の余地がある:複数の業者から見積もりを取ることを提案したり、修繕範囲について交渉したりすることができます。
Aさんの場合、立ち会いが行われていないため、請求額の根拠が曖昧で、交渉の余地も少なくなってしまっています。
Aさんは、まず不動産会社に連絡し、請求内訳の詳細な説明を求めました。フローリングのどの部分がどれだけ腐食しているのか、修繕方法、使用する材料、業者名、見積もり金額など、具体的な情報を開示するように要求しました。
また、立ち会いが行われなかった理由についても説明を求めました。もし、不動産会社に正当な理由がない場合、立ち会いなしに確定した請求額は無効である可能性もあります。
Aさんは、インターネットで原状回復に関する情報を集め、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を参考に、不動産会社との交渉に臨みました。
Aさんは、不動産会社との交渉が難航した場合に備え、弁護士や消費者センターへの相談も検討しました。
弁護士:法律の専門家として、Aさんの権利を守り、適切なアドバイスをしてくれます。
消費者センター:消費者からの相談を受け付け、事業者との間に入って和解を斡旋してくれます。
ADR(裁判外紛争解決手続き):裁判によらずに、第三者が間に入って紛争解決をサポートしてくれます。
これらの専門機関は、Aさんの状況に応じて、適切なサポートを提供してくれます。
今回の件で、Aさんはペットに関する意識を改めました。今後は、ペット可の賃貸物件を探し、ルールを守って犬との生活を楽しみたいと考えています。
「今回の経験は、私にとって大きな教訓になりました。これからは、犬Cも安心して預かれる、ペット可の賃貸を探します!」
Aさんは、前向きな気持ちで新たな生活をスタートさせることを決意しました。
原状回復費用の相場は、部屋の広さや損傷の程度によって異なりますが、一般的には数十万円程度が目安となります。しかし、Aさんのように70万円もの高額な請求を受けた場合、減額交渉を検討する価値は十分にあります。
減額交渉のポイントは以下の通りです。
1.  請求内訳の確認:修繕箇所、修繕方法、使用材料、見積もり金額など、詳細な内訳を確認し、不当な請求がないかチェックします。
2.  相場との比較:複数の業者から見積もりを取り、相場と比較します。
3.  経年劣化の考慮:通常の使用による損耗は、原状回復義務に含まれません。経年劣化による損傷は、減額対象となる可能性があります。
4.  証拠の収集:入居時の写真や契約書など、部屋の状態を証明できるものを収集します。
5.  交渉の準備:法律や判例を調べ、自分の主張を裏付ける根拠を準備します。
6.  冷静な交渉:感情的にならず、冷静に、論理的に交渉を進めます。
ペット禁止物件でのペットの預かりは、思わぬトラブルに繋がる可能性があります。もし、Aさんのように高額な原状回復費用を請求された場合は、泣き寝入りせずに、まずは請求内訳の確認と交渉を行いましょう。必要に応じて、専門家への相談も検討し、納得のいく解決を目指しましょう。
今回のケースから学べる教訓
ペット禁止物件では、絶対にペットを飼育したり、預かったりしない。
退去時には必ず立ち会いを行い、部屋の状態を双方で確認する。
原状回復費用について、不明な点や納得できない点があれば、必ず質問する。
高額な請求を受けた場合は、泣き寝入りせずに、専門家への相談も検討する。