ペット可賃貸の退去時に、高額な補修費用を請求されるトラブルは後を絶ちません。特に、犬と暮らしている場合は、臭いや汚れの問題が絡み、トラブルに発展しやすい傾向があります。今回のご相談者様は、退去後の調停で、火災報知機の設置業者の証言が原因で、さらに複雑な状況に陥ってしまったようです。
結論から申し上げますと、訴訟を検討する前に、まずは冷静に状況を整理し、専門家への相談をおすすめします。感情的な判断で訴訟を起こしてしまうと、時間も費用もかかってしまい、必ずしも望む結果が得られるとは限りません。
この記事では、今回のケースを参考に、ペット可賃貸の退去費用トラブルで訴訟を検討する前に知っておくべきこと、取るべき行動について、具体的なアドバイスを交えながら解説していきます。
今回の相談者様を仮にKさんとします。Kさんは、愛犬のためにペット可の賃貸マンションを選び、3年間暮らしていました。退去後、不動産会社から高額な補修費用を請求され、内訳を確認したところ、室内の汚損、特に犬の糞尿による汚染が原因とされていました。
Kさんは、夜間は部屋中にペットシーツを敷き、その下に防水カーペットとパンチカーペットを重ねて使用し、汚れたシーツはすぐに処分していたため、不動産会社の主張に納得がいきませんでした。
さらに、3年前に火災報知機を取り付けに来た業者の社員が、「部屋にペットシーツが一枚敷かれただけで犬の糞尿が放置してありゴミ屋敷同然」と証言していることが判明しました。Kさんは、業者の証言が事実と異なり、名誉棄損に当たるのではないかと憤り、訴訟を検討しています。
Kさんのように、ペット可賃貸の退去費用トラブルで訴訟を検討する前に、まずは以下の3つのポイントを確認しましょう。
まずは、賃貸契約書を隅々まで確認しましょう。特に、以下の項目は重要です。
原状回復義務:退去時に、どこまで原状回復する必要があるのかが記載されています。
特約事項:ペットに関する特約事項(ペットの種類、飼育方法、退去時の清掃費用など)が記載されている場合があります。
免責事項:通常の使用による損耗や経年劣化は、原状回復義務から免除される場合があります。
Kさんの場合、ペットに関する特約事項がどのように記載されているかを確認する必要があります。例えば、「退去時に専門業者による清掃を行う」という特約があれば、その費用はKさんが負担する必要があります。
不動産会社の主張が事実と異なる場合、それを証明するための証拠を集める必要があります。具体的には、以下のようなものが考えられます。
入居時の写真:入居時の室内の写真があれば、退去時の状況と比較できます。
清掃の記録:日々の清掃の記録(日付、清掃場所、使用した洗剤など)があれば、清掃を怠っていなかったことを証明できます。
ペットシーツの購入履歴:ペットシーツを定期的に購入していたことがわかる購入履歴は、犬の飼育状況を裏付ける証拠となります。
第三者の証言:友人や知人がKさんの部屋を訪れた際、室内の状況を目撃していれば、証言を得られる可能性があります。
Kさんの場合、夜間に部屋中にペットシーツを敷き、その下に防水カーペットとパンチカーペットを重ねて使用していたことを証明できる写真や購入履歴、第三者の証言を集めることが重要です。
賃貸契約や法律に関する知識がない場合、専門家に相談することをおすすめします。弁護士や不動産鑑定士などの専門家は、Kさんの状況を詳しく聞き取り、適切なアドバイスをしてくれます。
弁護士:法律の専門家として、Kさんの代理人となり、不動産会社と交渉したり、訴訟を起こしたりすることができます。
不動産鑑定士:不動産の専門家として、Kさんの部屋の損害状況を客観的に評価し、適正な補修費用を算出することができます。
Kさんの場合、弁護士に相談し、業者の証言が名誉棄損に当たるかどうか、訴訟を起こすメリットとデメリットなどを検討してもらうのが良いでしょう。
Kさんが最も気にしているのは、火災報知機設置業者の証言が名誉棄損に当たるかどうかという点です。
名誉棄損とは、公然の場で、事実を摘示し、人の名誉を毀損する行為を指します。今回のケースでは、以下の点がポイントとなります。
公然性:業者の証言が、不特定多数の人に伝わる可能性があるかどうか。
事実の摘示:業者の証言が、具体的な事実を指摘しているかどうか。
名誉毀損:業者の証言が、Kさんの社会的評価を低下させるかどうか。
Kさんの場合、業者の証言が不動産会社に伝えられ、調停の場で公開されたため、公然性は認められる可能性があります。また、「部屋にペットシーツが一枚敷かれただけで犬の糞尿が放置してありゴミ屋敷同然」という証言は、具体的な事実を指摘しており、Kさんの社会的評価を低下させる可能性があるため、名誉毀損に当たる可能性も否定できません。
ただし、名誉棄損が成立するためには、業者の証言が真実でないことが必要です。Kさんが、夜間に部屋中にペットシーツを敷き、その下に防水カーペットとパンチカーペットを重ねて使用し、汚れたシーツはすぐに処分していたことを証明できれば、業者の証言は虚偽であり、名誉棄損が成立する可能性が高まります。
訴訟は、時間も費用もかかるため、できる限り避けたいものです。Kさんの場合、訴訟以外にも、以下のような解決策が考えられます。
不動産会社との交渉:Kさんが集めた証拠を基に、不動産会社と再度交渉し、補修費用の減額を求める。
調停:裁判所が間に入り、Kさんと不動産会社の間で話し合いを行う。
ADR(裁判外紛争解決手続):専門家が間に入り、Kさんと不動産会社の間で和解をあっせんする。
Kさんの場合、まずは不動産会社との交渉を試み、それでも解決しない場合は、調停やADRを検討するのが良いでしょう。
今回のKさんのケースは、ペット可賃貸の退去時に起こりうるトラブルの典型的な例と言えます。犬との暮らしを楽しむためには、入居時から退去時を見据えた対策を講じることが重要です。
ペット可物件を選ぶ際の注意点:ペットの種類や数、飼育方法に関する制限を確認する。退去時の清掃費用や原状回復義務に関する特約事項を確認する。
日々の清掃:こまめな清掃を心がけ、臭いや汚れが染み付かないようにする。
ペット用グッズの活用:防水カーペットや消臭剤、空気清浄機などを活用し、室内の環境を整える。
写真や記録の保存:入居時や日々の清掃の記録、ペット用グッズの購入履歴などを保存しておく。
退去時の立会い:退去時には、不動産会社の担当者と一緒に室内の状況を確認し、補修費用の見積もりについて話し合う。
これらの対策を講じることで、退去時のトラブルを未然に防ぎ、安心して犬との暮らしを楽しむことができます。
ペット可賃貸の退去費用トラブルは、多くの飼い主が直面する可能性のある問題です。今回のKさんのケースのように、業者の証言が絡む複雑な状況に陥ることもあります。
訴訟を検討する前に、まずは賃貸契約書の内容を確認し、証拠を集め、専門家に相談することが重要です。また、訴訟以外の解決策も検討し、できる限り穏便な解決を目指しましょう。
日頃から、ペット可物件を選ぶ際の注意点や日々の清掃、ペット用グッズの活用などを心がけることで、退去時のトラブルを未然に防ぎ、愛犬との快適な暮らしを末永く楽しんでください。