賃貸物件でのペットとの暮らしは、かけがえのない思い出を私たちにもたらしてくれます。しかし、退去時には様々な疑問や不安が生じるものです。特に、ペット可物件における敷金やハウスクリーニング代については、トラブルも少なくありません。今回は、小型犬と4年間暮らした賃貸マンションを退去したAさんのケースを基に、ペット可物件の退去費用について詳しく解説します。
Aさんの疑問はもっともです。ペット可物件では、通常の賃貸物件とは異なる契約内容になっている場合があり、退去時の費用負担についても注意が必要です。Aさんのケースを詳しく見ていきましょう。
Aさんは、敷金礼金0円のペット可賃貸マンションに4年間居住し、小型犬を1匹飼育していました。入居時にペット飼育のための敷金1ヶ月分を支払っています。退去時の立ち会い検査では大きな問題は指摘されなかったものの、ハウスクリーニング代を後日請求されることに疑問を感じています。
まず確認すべきは、入居時に交わした賃貸契約書と重要事項説明書です。これらの書類には、退去時の費用負担に関する条項が記載されているはずです。特に、以下の点に注目して確認しましょう。
敷金の扱いの条項: 敷金は、通常、家賃の滞納や借主の故意・過失による損害に対する担保として預けられます。しかし、契約によっては、ペット飼育による損耗を考慮して、敷金の一部または全部が償却される場合があります。
ハウスクリーニング代の負担に関する条項: ハウスクリーニング代の負担については、契約によって貸主負担、借主負担、または双方の合意によるものと定められています。ペット可物件の場合、ペットによる臭いや汚れを考慮して、借主負担とするケースが多く見られます。
特約の有無: 契約書には、通常の契約内容に加えて、特別な取り決め(特約)が記載されている場合があります。ペット飼育に関する特約がないか確認しましょう。
Aさんの契約書には、以下のような記載がありました。
> ◼実費精算方式
> 建物における経年変化及び通常の使用による損耗等の修繕費用は家賃に含まれていますので下欄の特約のない限り貸主が負担します。入居時にお預かりした敷金は、退去時に全額無利息で借主に返還されます。ただし、借主の故意・過失(善管注意義務違反)による建物の破損・汚損や未払い家賃等の債務不履行が存在する場合又は下欄の特約がある場合は別途請求します。
>
> 補修費における特約:□有 ◼無
> 建物における修繕費用につきましては借主の善管注意義務違反がなければ、本来貸主の負担となりますが、次の項目に対する修繕費用にちきましては、借主の善管注意義務違反の有無に関係なく借主の負担となります。
> 《不利益条項としての承諾》
> □畳の表替え □ふすまの張替え □障子の張替え □ハウスクリーニング
この記載から、Aさんの契約は「実費精算方式」であり、原則として敷金は全額返還されること、ただし、借主の故意・過失による損耗や特約がある場合は別途請求されることがわかります。また、Aさんの契約にはハウスクリーニングに関する特約がないため、本来であれば貸主が負担すべき費用となります。
ペット可物件の場合、通常の賃貸物件に比べて、退去時の費用負担が大きくなる傾向があります。その理由は、ペットによる臭いや汚れ、傷などが、通常の損耗とは見なされない場合があるためです。
臭い: ペットの臭いは、壁や床に染み付いていることがあり、ハウスクリーニングだけでは完全に除去できない場合があります。そのため、消臭作業が必要となることがあり、その費用は借主負担となることがあります。
汚れ: ペットの毛や排泄物による汚れは、通常の清掃では落としきれない場合があります。特に、フローリングの隙間やカーペットなどに染み込んだ汚れは、専門業者によるクリーニングが必要となることがあります。
傷: ペットが壁や柱を引っ掻いたり、床を傷つけたりすることがあります。これらの傷は、借主の故意・過失による損害と見なされ、修繕費用を請求されることがあります。
Aさんの場合、契約書にハウスクリーニングに関する特約がないため、原則としてハウスクリーニング代は貸主負担となります。しかし、ペットを飼育していたことを考慮すると、ペットによる臭いや汚れが通常の使用による損耗を超えていると判断された場合、ハウスクリーニング代の一部または全部を請求される可能性があります。
Aさんは、まず不動産会社または大家さんに連絡を取り、ハウスクリーニング代を請求される理由について詳しく説明を求めるべきです。その際、契約書の内容を再度確認し、自身の主張を明確に伝えましょう。
ハウスクリーニング代の内訳の確認: ハウスクリーニング代が請求される場合、その内訳を詳しく確認しましょう。ペットによる特別な清掃が必要となった場合は、その根拠を示すよう求めることが重要です。
交渉: ハウスクリーニング代の負担について、貸主と交渉することも可能です。例えば、ペットによる損耗が軽微であると判断される場合や、長期間居住していたことを考慮して、一部減額を求めることができます。
専門家への相談: 交渉が難航する場合は、消費者センターや弁護士などの専門家に相談することも検討しましょう。専門家のアドバイスを受けることで、適切な対応策を見つけることができます。
今回のAさんのケースから、ペットと暮らす賃貸物件を選ぶ際には、以下の点に注意することが重要であることがわかります。
契約内容の確認: 契約書や重要事項説明書を隅々まで確認し、退去時の費用負担に関する条項を理解しておくことが重要です。特に、ペット飼育に関する特約の有無は必ず確認しましょう。
ペット可の条件: ペット可物件には、様々な条件があります。例えば、飼育できるペットの種類や大きさ、頭数などが制限されている場合があります。自身のペットに合った物件を選ぶようにしましょう。
物件の構造: ペットの足音や鳴き声は、近隣住民とのトラブルの原因となることがあります。防音性の高い物件を選ぶようにしましょう。
共用部分のルール: 共用部分でのペットの散歩や排泄に関するルールを確認しましょう。ルールを守ることは、近隣住民との良好な関係を築く上で重要です。
ペットとの賃貸生活は、事前の準備と契約内容の確認が重要です。退去時のトラブルを避けるためにも、契約書をしっかり読み込み、不明な点は不動産会社や大家さんに確認するようにしましょう。また、日頃からペットのしつけや清掃を徹底し、物件を大切に使うことが、円満な賃貸生活を送るための秘訣です。今回のAさんのケースが、皆様のペットとの賃貸生活の一助となれば幸いです。