退去時の原状回復費用、特にペットと暮らしている場合は、どこまで負担すべきか悩ましいですよね。今回は、フローリングの張替え費用負担について、具体的な事例を交えながら、妥当性を検証していきましょう。
結論から言うと、フローリングの全面張替えが本当に必要かどうか、そして7万円の負担額が適切かどうかは、いくつかの要素を考慮して判断する必要があります。安易に支払うのではなく、まずは冷静に状況を整理し、交渉の余地を探ることが大切です。
今回のケースは、まさに多くのペットオーナーが直面する問題です。フローリングの傷は、犬との生活では避けられないもの。しかし、そのすべてが借主の負担になるわけではありません。
相談者:Aさん(犬を飼っている)
物件:築22年のペット可賃貸マンション(1LDK)
退去時の状況:フローリングに擦れたような傷が多数
管理会社:株式会社B
Aさんは、愛犬との暮らしのために、築22年のペット可賃貸マンションに2年半住んでいました。退去時、管理会社のB社から、フローリングの傷を理由に全面張替えが必要だと告げられ、25万円以上の費用のうち7万円を負担するように求められました。
Aさんは、B社の提示する金額に納得がいかず、インターネットで情報を集めましたが、様々な意見があり、どうすれば良いか分からずに困っていました。
フローリングの傷の原因が、通常の使用によるものか、Aさんの過失によるものか不明確。
B社からの見積もりが、Aさんの部屋だけのものかどうかが不明確。
7万円という金額の算出根拠が曖昧。
まず、原状回復義務について正しく理解しておきましょう。国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によると、原状回復とは「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用によって生じた損耗・毀損を復旧すること」と定義されています。
つまり、通常の使用による損耗は、家賃に含まれていると考えられ、借主が負担する必要はないのです。
犬との暮らしでは、以下のような損耗が考えられます。
犬の歩行による軽微な傷
犬の粗相によるシミ(すぐに拭き取った場合)
犬の爪による小さな凹み
これらの損耗は、通常の使用範囲とみなされる可能性があります。しかし、以下のような場合は、借主の負担となる可能性が高くなります。
犬が故意にフローリングを傷つけた場合
犬の粗相を放置し、フローリングが広範囲に汚染された場合
犬の爪による深い傷や、フローリングの剥がれ
今回のケースでは、Aさんの犬がどのような状況でフローリングに傷をつけたのかが重要になります。
B社から提示された7万円という金額が妥当かどうかを判断するために、以下のポイントを確認しましょう。
まずは、B社に詳細な見積書を提出してもらいましょう。見積書には、以下の情報が記載されているはずです。
フローリングの張替え範囲(部屋全体か、一部か)
使用するフローリングの種類と単価
工事費用
諸経費
これらの情報をもとに、金額が妥当かどうかを判断します。もし、見積もりの内訳が不明確な場合は、B社に説明を求めましょう。
B社の見積もりだけでなく、複数の業者から見積もりを取ることをおすすめします。複数の見積もりを比較することで、相場を把握することができます。
また、他の業者に見積もりを依頼する際に、B社の見積もりを見せることで、より正確な見積もりを出してもらうことができます。
フローリングの傷の状態を、写真や動画で記録しておきましょう。特に、傷の深さや範囲を詳しく記録しておくことが重要です。
もし、傷が軽微で、補修で済む可能性がある場合は、B社に補修での対応を交渉してみましょう。
賃貸契約書には、原状回復に関する条項が記載されているはずです。契約書の内容をよく確認し、借主の負担範囲がどのように定められているかを確認しましょう。
もし、契約書の内容が不明確な場合は、弁護士や消費者センターに相談することをおすすめします。
B社との交渉では、以下の点を意識しましょう。
冷静かつ丁寧に話す
感情的にならない
根拠となる資料(見積もり、写真、契約書など)を提示する
妥協点を探る
例えば、以下のような交渉が考えられます。
「フローリングの傷は、犬との通常の使用によるものであり、全面張替えは不要ではないか」
「傷が軽微な部分については、補修で対応できないか」
「複数の業者から見積もりを取った結果、B社の見積もりは相場よりも高い」
「7万円という金額の算出根拠が不明確である」
賃貸トラブルに詳しい専門家Cさんは、以下のようにアドバイスします。
「ペット可物件であっても、借主は原状回復義務を負いますが、それはあくまで通常の使用を超える損耗に限られます。今回のケースでは、フローリングの傷が通常の使用によるものか、Aさんの過失によるものかが争点となります。まずは、B社に詳細な見積もりを提出してもらい、複数の業者から見積もりを取って比較検討することが重要です。また、契約書の内容をよく確認し、不明な点があれば専門家に相談することをおすすめします。」
上記のチェックポイントと交渉術を踏まえて、最終的な判断を下しましょう。もし、B社の主張に納得がいかない場合は、弁護士や消費者センターに相談することも検討しましょう。
Aさんの場合、B社から提示された7万円の負担額が妥当かどうかは、上記のチェックポイントをすべて確認した上で判断する必要があります。
もし、フローリングの傷が軽微で、補修で済む可能性がある場合は、B社に補修での対応を強く交渉すべきです。
また、7万円という金額の算出根拠が不明確な場合は、B社に詳細な説明を求め、納得できるまで交渉を続けることが大切です。
ペットとの暮らしは、私たちに癒しと喜びを与えてくれます。しかし、賃貸物件では、退去時の原状回復費用が問題となることもあります。
今回のケースのように、フローリングの張替え費用を請求された場合は、安易に支払うのではなく、まずは冷静に状況を整理し、交渉の余地を探ることが大切です。
今回の記事が、皆様のペットとの快適な賃貸生活の一助となれば幸いです。