賃貸物件の退去時、特にペットと暮らしていた場合は、原状回復費用が気になりますよね。今回は、6年間賃貸マンションに住み、途中から法人契約から個人契約に切り替えたAさんのケースを基に、退去費用の相場や、自分で修繕すべきか否かについて、具体的なアドバイスをしていきます。
まず、契約期間の考え方ですが、一般的には契約名義が変更された時点で、新たな契約とみなされることが多いです。そのため、今回のケースでは、個人名義での契約開始からの4年間が基準となる可能性が高いでしょう。ただし、契約書に特約事項などが記載されている場合もあるので、必ず契約書を確認してください。
次に、原状回復費用ですが、これは「通常の使用による損耗」と「故意・過失による損傷」で考え方が異なります。ペット(犬・猫)との生活は、どうしても「故意・過失による損傷」とみなされるケースが多く、費用が高額になる傾向があります。
Aさんのケースでは、以下の4点が主な懸念点です。
1. クッションフロアの猫の爪痕とタバコの跡
2. ドアの犬による損傷
3. 壁の角の犬によるかじり
4. 金庫の跡
これらの損傷について、一つずつ詳しく見ていきましょう。
猫の爪痕は、範囲や程度によって費用が大きく変わります。一部分の張り替えで済む場合もあれば、全面張り替えが必要になることもあります。タバコの跡は、明らかにAさんの過失とみなされるため、張り替え費用はAさんの負担となるでしょう。
部分的な張り替えの場合: 1㎡あたり5,000円~10,000円程度
全面張り替えの場合: 2LDK全体で50,000円~150,000円程度
ドアの損傷も、程度によって修理費用が変わります。小さな傷であれば補修で済みますが、Aさんのケースのようにペイントが剥がれている場合は、ドア全体の交換が必要になる可能性もあります。
補修の場合: 5,000円~20,000円程度
ドア交換の場合: 30,000円~100,000円程度
壁の角のかじり跡は、壁紙の張り替えだけでなく、下地(石膏ボードなど)の補修が必要になる場合もあります。範囲が広ければ広いほど、費用は高くなります。
壁紙の張り替え(一部): 1㎡あたり2,000円~5,000円程度
下地補修が必要な場合: 上記に加え、1箇所あたり5,000円~10,000円程度
金庫の跡は、通常の使用による損耗とみなされる可能性もありますが、程度によってはAさんの負担となることもあります。例えば、床が大きく凹んでいる場合や、変色が著しい場合は、費用が発生するかもしれません。
軽微な変色の場合: クリーニングで済む可能性あり
凹みや著しい変色がある場合: 10,000円~30,000円程度
一般的に、賃貸物件の原状回復においては、居住期間が長ければ長いほど、借主に有利になると言われています。これは、経年劣化による損耗は、家賃に含まれていると考えられるためです。
しかし、今回のケースでは、ペット(犬・猫)による損傷が主な原因であるため、居住期間が長くても、費用が大幅に減額されるとは限りません。ただし、交渉次第では、減額の余地もあるかもしれません。
Aさんの親戚にリフォーム業者がいるとのことですが、自分で修繕することにはメリットとデメリットがあります。
メリット
費用を抑えられる可能性がある
自分の納得のいく仕上がりにできる
デメリット
管理会社から「素人が修繕した」と指摘される可能性がある
修繕箇所が原因で、さらに費用を請求される可能性がある
基本的には、管理会社に相談し、許可を得てから修繕を行うのがおすすめです。また、修繕後には、必ず管理会社に確認してもらい、問題がないことを確認しておきましょう。
Aさんのケースでは、上記の損傷を考慮すると、退去費用は10万円~30万円程度になる可能性があります。ただし、これはあくまで目安であり、実際の費用は、管理会社や不動産会社によって異なります。
退去費用を抑えるためには、以下の点に注意しましょう。
入居時の契約書をよく確認する
退去前に、管理会社と立ち会いを行う
損傷箇所について、正直に伝える
見積もりを複数社から取る
納得できない場合は、交渉する
特に、見積もりを複数社から取ることは、非常に重要です。管理会社から提示された見積もりが適正かどうかを判断するために、必ず複数の業者に見積もりを依頼しましょう。
また、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を参考に、自分の権利を主張することも大切です。
ペット(犬・猫)との暮らしは、心豊かなものですが、退去時には原状回復費用が発生する可能性があることを覚えておきましょう。日頃から、ペットが部屋を傷つけないように対策を講じることが大切です。
今回のAさんのケースを参考に、退去時のトラブルを未然に防ぎ、スムーズな引越しを実現してくださいね。