愛犬との暮らしはかけがえのないものですが、賃貸物件の退去時には原状回復費用でトラブルになることも少なくありません。特にペット可物件の場合、通常の退去よりも高額な請求をされるケースが見受けられます。今回は、犬と暮らした賃貸物件の退去時に発生した高額な原状回復費用について、妥当性を検証し、トラブルを解決するための具体的なアドバイスをQ&A形式でご紹介します。
今回のケースでは、犬との居住による床の損傷や建具の損壊に対する原状回復費用として、敷金を差し引いても30万円以上という高額な請求がされています。しかし、請求の内訳を見ると、床の全面張り替えに20万円、クロスの張り替え、建具の修理など、本当に全額負担する必要があるのか疑問が残る項目が含まれています。
犬の尿による床の膨れが一部である場合、本当に全面張り替えが必要なのか、まずは専門家の意見を聞くことが重要です。部分的な補修で済む可能性もありますし、床材の種類によっては、部分的な張り替えの方が安価で済む場合もあります。
専門家のアドバイス
複数の業者に見積もりを依頼し、損傷状況を詳しく説明した上で、最適な補修方法を提案してもらいましょう。
写真や動画を証拠として残しておきましょう。
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を参考に、大家さんの主張が妥当かどうかを判断しましょう。
クロスの張り替え費用は、通常、経過年数によって借主の負担割合が変動します。築年数が古い物件であれば、借主の負担割合は少なくなる傾向にあります。
ポイント
契約書にクロスの張り替えに関する特約がないか確認しましょう。
国土交通省のガイドラインでは、クロスの耐用年数は6年とされています。
大家さんから提示された見積もりが妥当かどうか、複数の業者に見積もりを依頼して比較検討しましょう。
建具の傷が軽微で、木材を充てる程度の修理で済む場合、高額な修理費用を請求されるのは不当である可能性があります。
確認すべき点
傷の原因が犬の引っ掻き傷である場合、故意または過失による損害とみなされる可能性があります。
しかし、経年劣化による傷や、通常の使用による傷は、借主の負担とはなりません。
修理費用の見積もりを取り、修理方法や費用が妥当かどうかを判断しましょう。
原状回復費用の相場を知ることは、高額請求された際に、その妥当性を判断するための重要な基準となります。インターネットや書籍で情報を収集するだけでなく、専門家や不動産業者に相談することも有効です。
相場を知るための情報源
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」
消費者庁の相談事例
不動産関連のウェブサイトや書籍
弁護士や不動産鑑定士などの専門家
高額な原状回復費用を請求された場合、感情的にならず、冷静かつ論理的に大家さんと交渉することが重要です。
交渉のステップ
1. 請求内容を精査し、不明な点や疑問点を洗い出す。
2. 証拠となる写真や動画、見積もりなどを準備する。
3. 国土交通省のガイドラインや判例などを参考に、自身の主張を整理する。
4. 大家さんと直接会って話し合うか、書面で交渉する。
5. 交渉が難航する場合は、弁護士や消費者センターなどの専門機関に相談する。
交渉が決裂した場合、法的手段を検討することも視野に入れる必要があります。少額訴訟や調停など、費用や手間を抑えた解決方法もあります。
法的手段の種類
少額訴訟:60万円以下の金銭を請求する場合に利用できる、簡略化された裁判手続き。
調停:裁判所を介して、当事者間で話し合いによる解決を目指す手続き。
訴訟:裁判所が判決を下すことで、紛争を解決する手続き。
実際に、犬との居住による原状回復費用を巡るトラブルで、交渉によって減額に成功した事例は数多く存在します。
事例Aさん
犬の引っ掻き傷によるクロスの張り替え費用として20万円を請求されたAさん。複数の業者に見積もりを依頼し、最も安価な業者に見積もりを提示したところ、大家さんは当初の請求額から5万円減額することで合意しました。
事例Bさん
犬の尿による床のシミに対して、全面張り替え費用として30万円を請求されたBさん。国土交通省のガイドラインを参考に、経年劣化による損耗であると主張したところ、大家さんは請求を撤回しました。
犬との賃貸生活は、事前の準備と退去時の注意で、トラブルを未然に防ぐことができます。万が一、高額な原状回復費用を請求された場合は、冷静に請求内容を精査し、専門家や関連機関に相談しながら、賢く交渉を進めましょう。