犬と暮らす賃貸物件からの退去、費用に関するトラブルは多いですよね。特にペット可物件の場合、通常の退去費用に加えて、ペットによる損耗に対する追加費用が発生することがあります。しかし、請求されるがままに支払うのは納得がいかない、という方もいるのではないでしょうか。
この記事では、ペット可賃貸物件の退去費用に関するよくある疑問や、敷金返還交渉のポイントを、具体的な事例を交えながら解説します。
この記事を読めば、退去費用の内訳を理解し、適切な交渉を行うための知識を身につけ、納得のいく退去を実現できるはずです。
結論から言うと、提示された退去費用が必ずしも妥当とは限りません。特に、ペットを飼育していた場合、追加の費用が発生することは一般的ですが、その内訳や金額が適切かどうかをしっかりと確認する必要があります。
原状回復義務の範囲や、経年劣化による損耗の負担区分など、法律や判例に基づいた交渉を行うことで、敷金が戻ってくる可能性は十分にあります。
この記事では、具体的な事例を基に、退去費用の相場や交渉のポイントを詳しく解説していきます。ぜひ最後まで読んで、あなたの退去費用に関する疑問を解消し、納得のいく解決を目指してください。
今回は、犬と暮らすAさんのケースを参考に、退去費用の内訳と交渉の進め方を具体的に見ていきましょう。
Aさんは、犬と3年間暮らしたペット可賃貸マンションを退去する際、敷金30万円を預けていました。しかし、退去時に25万円の請求を受け、敷金から10万円が差し引かれ、さらに5万円を追加で支払う必要があると言われました。
請求の内訳は、ルームクリーニング代、クロスの張り替え費用、畳の表替え費用、エアコンクリーニング代などでした。
Aさんは、不動産会社から「犬を飼っていたとは思えないほど綺麗」と言われたにも関わらず、高額な請求に納得がいかず、私たちに相談してきました。
まずは、Aさんの請求明細を詳しく見てみましょう。
ルームクリーニング:5万円
クロス全面張り替え:約10万円
畳表替え:3万円(入居時は表替えされていなかった)
エアコンクリーニング:1万3000円
雑剤消耗品費:4000円
発生材処分費:1万円
諸経費:5000円
敷引:10万円
合計:23万7000円
この内訳を見て、いくつか疑問点があります。
1. 畳の表替え費用:入居時に表替えされていなかった場合、Aさんが負担する必要はない可能性があります。
2. クロスの全面張り替え費用:犬によるクロスの汚れや傷が、通常の使用による損耗を超えるものでなければ、Aさんが全額を負担する必要はない可能性があります。
3. エアコンクリーニング費用:前の住人が残していったエアコンのクリーニング費用を、Aさんが負担する必要があるのか確認が必要です。
賃貸契約における原状回復とは、借りたときの状態に戻すことではありません。国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によると、原状回復は「賃借人の居住、使用により発生した 建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用に起因する損耗・毀損を復旧すること」と定義されています。
つまり、Aさんが負担すべきは、故意や過失、または通常の使用を超えるような使用によって生じた損耗・毀損のみです。
経年劣化や通常の使用による損耗は、家賃に含まれていると考えられます。
犬との生活においては、犬による引っかき傷や臭いなどが問題になることが多いですが、Aさんの場合、不動産会社が「犬を飼っていたとは思えないほど綺麗」と言っていることから、通常の使用を超える損耗があったとは考えにくいです。
敷引きとは、敷金の一部を契約終了時に返還しないという特約です。ペット可物件の場合、ペットによる損耗を考慮して、敷引きが設定されていることがあります。
しかし、敷引きが有効となるためには、以下の条件を満たす必要があります。
1. 契約時に敷引きについて明確な説明があったこと
2. 敷引きの金額が合理的な範囲であること
Aさんの場合、敷引き10万円が妥当な金額かどうかは、契約時の説明や、犬による損耗の程度によって判断されます。
Aさんのケースでは、以下のステップで交渉を進めることをお勧めします。
ステップ1:請求内容の確認と反論
まずは、請求書の内訳を再度確認し、納得できない点や疑問点を洗い出します。
そして、不動産会社に対して、書面で反論を伝えましょう。
例えば、以下のように記載することができます。
畳の表替え費用は、入居時に表替えされていなかったため、負担する義務はないと考えます。
クロスの全面張り替え費用は、犬による損耗が通常の使用を超えるものではないため、全額を負担する義務はないと考えます。
エアコンクリーニング費用は、前の住人が残していったエアコンのクリーニング費用であり、負担する義務はないと考えます。
敷引き10万円は、契約時に明確な説明がなく、金額も高すぎると考えます。
ステップ2:証拠の収集
交渉を有利に進めるためには、証拠を集めることが重要です。
Aさんの場合、以下のような証拠が考えられます。
入居時の契約書
入居時の部屋の状態を記録した写真や動画
退去時の不動産会社の担当者の発言を記録したメモ
犬の飼育状況を示す写真や動画(犬が室内で暴れることがない、清潔に飼育していたなど)
ステップ3:国土交通省のガイドラインの提示
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」は、原状回復義務の範囲や、経年劣化による損耗の負担区分について詳しく解説しています。
このガイドラインを参考に、Aさんのケースにおける原状回復義務の範囲を明確にし、不動産会社に提示しましょう。
ステップ4:第三者機関への相談
不動産会社との交渉が難航する場合、第三者機関に相談することも有効です。
例えば、以下のような機関があります。
消費生活センター
国民生活センター
弁護士会
これらの機関は、消費者からの相談を受け付け、専門的なアドバイスや紛争解決のサポートを提供しています。
ステップ5:少額訴訟の検討
上記のステップを経ても解決しない場合、最終手段として少額訴訟を検討することもできます。
少額訴訟は、60万円以下の金銭を請求する場合に利用できる裁判手続きで、通常の裁判よりも手続きが簡単で、費用も抑えられます。
ただし、少額訴訟は時間と労力がかかるため、慎重に検討する必要があります。
Aさんの事例を参考に、交渉を成功させるためのポイントをまとめました。
1. 冷静かつ論理的に:感情的にならず、冷静に、論理的に交渉を進めましょう。
2. 証拠を揃える:契約書や写真、メモなど、交渉を有利に進めるための証拠を揃えましょう。
3. 専門家の知識を活用する:国土交通省のガイドラインや、弁護士などの専門家の知識を活用しましょう。
4. 第三者機関に相談する:交渉が難航する場合、第三者機関に相談することも検討しましょう。
5. 諦めない:一度の交渉でうまくいかなくても、諦めずに、粘り強く交渉を続けましょう。
ペットと暮らす賃貸物件の退去は、通常の退去よりも費用に関するトラブルが起こりやすいですが、正しい知識を持ち、適切な交渉を行うことで、納得のいく解決を目指すことができます。
Aさんのケースでは、畳の表替え費用やクロスの全面張り替え費用、エアコンクリーニング費用など、Aさんが負担する必要のない費用が含まれている可能性がありました。
Aさんは、これらの点を指摘し、証拠を揃え、国土交通省のガイドラインを提示することで、不動産会社との交渉を有利に進めることができるでしょう。
もしあなたが今、退去費用で悩んでいるなら、この記事で解説した内容を参考に、諦めずに交渉に臨んでください。
そして、愛犬との快適な生活を、これからも楽しんでくださいね。