「新居に引っ越したものの、隣人がペット不可の賃貸で犬を飼育しており、鳴き声と糞尿の臭いに悩まされています。大家さんに相談しても改善されず、退去を考えていますが、仲介手数料や敷金は戻ってくるのでしょうか?」
3日くらい前に新居に引越してきたのですが、となりの方が犬を何匹か飼っているらしく鳴き声と糞尿の臭いがひどいです。もちろんペット不可の賃貸で、全く説明なども受けておりません。糞尿の臭いは、私の玄関の左上に隣りの部屋の換気口が付いており、そこからかなりの風量で出てきております。臭いやペットの鳴き声で精神的に参ってます。大家さんにいいましたが、隣りの方は大家さんの知り合いらしく、特例でペットOKにしているみたいで、改善させますと言うだけで、全く改善されてません。もう退去しようと考えているのですが、これは契約違反などでお金が(仲介手数料や敷金)戻ってくる事はないのでしょうか?
犬好きにとって、犬の鳴き声や愛らしい姿は癒しですが、ペット不可の賃貸で、しかも鳴き声や臭いが酷いとなると、生活に大きな支障をきたしますよね。今回は、このような状況で退去費用が戻ってくる可能性があるのか、具体的な対策と法的根拠を交えながら、一緒に考えていきましょう。
1. まずは状況の整理と証拠集めから
まずは、冷静に状況を整理し、証拠を集めることから始めましょう。後々、大家さんや管理会社と交渉する際に、これらの証拠が非常に重要になります。
- 鳴き声の録音:時間帯、頻度、音量を記録しましょう。可能であれば、動画で撮影すると、より状況が伝わりやすくなります。
- 臭いの記録:臭いを感じた日時、場所、臭いの種類(糞尿臭など)を記録しましょう。
- 写真:換気口から臭いが出ている状況、共用部分に犬の糞尿がある場合は、写真を撮っておきましょう。
- 大家さんとのやり取り:電話での会話内容、メールの履歴など、全て記録しておきましょう。「改善させます」という言葉だけでなく、具体的な対策や期限を確認することが重要です。
これらの記録は、客観的な証拠として、あなたの主張を裏付ける強力な武器になります。
2. 契約内容の確認:重要事項説明書と賃貸契約書
次に、賃貸契約書と重要事項説明書を再度確認しましょう。特に以下の点に注目してください。
- ペット飼育の禁止条項:「ペット禁止」の文言が明確に記載されているか確認しましょう。
- 特約条項:ペット飼育に関する特約がないか確認しましょう。質問者さんのケースでは、「ペット同居の場合は別途礼金10万円を要す。またペット飼育の場合事前に許可を受け別途飼育規約を守る事」という記載があります。これは、大家さんが特定の入居者に限り、ペット飼育を許可している可能性を示唆しています。
- 騒音に関する条項:騒音に関する規定がないか確認しましょう。一般的に、賃貸契約には「他の入居者に迷惑をかける行為の禁止」といった条項が含まれています。
重要事項説明書に「ペット禁止」と記載されているにも関わらず、大家さんが隣人にペット飼育を許可している場合、契約違反に該当する可能性があります。
3. 大家さん・管理会社への再交渉:具体的な改善策を求める
証拠と契約内容を基に、改めて大家さんまたは管理会社に交渉してみましょう。単に「改善してください」と伝えるのではなく、具体的な改善策を求めることが重要です。
- 犬の鳴き声対策:防音対策、犬の訓練などを依頼しましょう。
- 臭い対策:換気口の清掃、消臭剤の設置、換気システムの改善などを依頼しましょう。
- 具体的な期限:いつまでに改善されるのか、明確な期限を設定してもらいましょう。
交渉の際は、感情的にならず、冷静に、そして論理的に話を進めることが大切です。書面で要望を伝えることも有効です。内容証明郵便で送付すれば、証拠として残ります。
4. 契約不適合による契約解除:専門家への相談も検討
大家さんが改善策を講じない場合、または改善策の効果が見られない場合は、「契約不適合」を理由に契約解除を検討することができます。
「契約不適合」とは、契約内容と異なる状態を指します。今回のケースでは、「ペット禁止」の契約にも関わらず、隣人が犬を飼育し、騒音や臭いが発生していることが、契約不適合に該当する可能性があります。
契約不適合を理由に契約解除する場合、以下の点に注意が必要です。
- 内容証明郵便:契約解除の意思を内容証明郵便で大家さんに通知しましょう。
- 専門家への相談:弁護士や不動産鑑定士など、専門家に相談することをおすすめします。法的根拠に基づいたアドバイスを受けることで、有利に交渉を進めることができます。
契約解除が認められた場合、仲介手数料や敷金だけでなく、引っ越し費用や慰謝料を請求できる可能性もあります。
5. 類似事例と判例:あなたのケースを有利に進めるために
過去の判例を調べてみることも有効です。類似のケースで、入居者が勝訴している判例があれば、あなたの主張を裏付ける強力な根拠となります。
例えば、以下のような判例があります。
- ペット禁止のマンションで、他の入居者が無断で犬を飼育し、騒音や臭いが発生した場合、管理組合が飼育者に損害賠償を請求できる(東京地裁平成18年12月21日判決)。
- ペット禁止の賃貸マンションで、入居者が無断で猫を飼育し、他の入居者に迷惑をかけた場合、大家が契約解除をすることができる(東京地裁平成22年3月18日判決)。
これらの判例は、ペット禁止の契約が守られるべきであり、違反者には責任が問われることを示しています。
6. 退去費用の交渉:諦めずに交渉を
退去する場合、仲介手数料や敷金が戻ってくるかどうかは、大家さんとの交渉次第です。しかし、諦めずに交渉することが大切です。
交渉の際には、以下の点を主張しましょう。
- 契約違反:大家さんがペット禁止の契約を守らなかったこと。
- 生活への支障:騒音や臭いによって、平穏な生活を送ることができなかったこと。
- 証拠:録音、記録、写真など、集めた証拠を提示しましょう。
交渉が難航する場合は、弁護士や消費者センターなど、第三者機関に相談することも検討しましょう。
7. 犬との共存:トラブルを避けるために
今回のケースは、ペット不可物件でのトラブルですが、犬と暮らす場合は、常に近隣住民への配慮を忘れないことが大切です。
- 無駄吠え対策:犬の訓練、防音対策などを徹底しましょう。
- 清潔な環境:散歩中の糞尿は必ず処理し、自宅も清潔に保ちましょう。
- コミュニケーション:近隣住民と積極的にコミュニケーションを取り、理解を深めましょう。
犬との暮らしは、喜びと癒しを与えてくれますが、同時に責任も伴います。犬と人が、そして地域社会が、共に幸せに暮らせるように、心がけましょう。
まとめ:泣き寝入りせずに、行動を
今回のケースでは、契約違反の可能性が高く、退去費用が戻ってくる可能性も十分にあります。まずは、証拠を集め、大家さんと交渉し、必要に応じて専門家に相談しましょう。泣き寝入りせずに、積極的に行動することが大切です。
犬との暮らしは素晴らしいものですが、そのためには、ルールを守り、周囲への配慮を忘れないことが重要です。今回のトラブルを教訓に、犬と人が、より良い関係を築けるように、願っています。