この度はご質問ありがとうございます。ペット不可の賃貸物件で犬を飼うことになり、初期費用について管理会社から説明を受け、困惑されている状況、お察しいたします。今回は、同様のケースをいくつか見ていきながら、初期費用の内訳や交渉の余地について、詳しく解説していきます。
Aさんの場合:
Aさんは、駅から徒歩15分の場所にある、築10年の2階建てアパートに住んでいます。もともとペット不可の物件でしたが、どうしても愛犬(トイプードル)と一緒に暮らしたかったAさんは、大家さんに直接交渉することにしました。
まず、Aさんは大家さんに手紙を書きました。手紙には、犬種、性格、飼育方法、そして「迷惑をかけないように細心の注意を払う」という誓約を丁寧に記載しました。また、近隣住民への配慮として、散歩の時間帯や場所、排泄物の処理方法なども具体的に伝えました。
数日後、大家さんから返事があり、面談することになりました。面談では、Aさんは愛犬の写真や動画を見せながら、どれだけ愛情を注いで育てているかを伝えました。また、万が一、犬が原因で物件に損害を与えた場合は、全額Aさんが負担することも約束しました。
大家さんは、Aさんの熱意と誠意に心を動かされ、ペット飼育を許可してくれました。ただし、条件として、敷金を1ヶ月分追加すること、そして、退去時には専門業者によるクリーニングを行うことを求められました。Aさんは、これらの条件を快諾し、愛犬との暮らしをスタートさせることができました。
Bさんの場合:
Bさんは、都心にある築30年のマンションに住んでいます。Bさんが飼っているのは、保護犬として引き取った中型犬(柴犬)です。このマンションもペット不可でしたが、Bさんは管理会社に相談し、ペット飼育を許可してもらうことができました。
Bさんが管理会社に相談した際、まず、犬の健康状態や性格について詳しく説明しました。また、獣医の診断書や、しつけ教室の修了証なども提出しました。さらに、近隣住民への配慮として、犬が吠えないように訓練することや、共用部分を清潔に保つことを約束しました。
管理会社は、Bさんの犬に対する愛情や、近隣住民への配慮を評価し、ペット飼育を許可してくれました。ただし、条件として、ペット飼育に関する誓約書に署名すること、そして、ペット保険に加入することを求められました。Bさんは、これらの条件を承諾し、愛犬との暮らしを始めることができました。
初期費用として礼金を求められた場合、その理由を明確にすることが重要です。一般的に、礼金は大家さんへの謝礼として支払われるもので、退去時に返還されることはありません。一方、敷金は退去時の修繕費用や未払い賃料の担保として預けるもので、残額は返還されます。
管理会社が「退去時の修繕費用が大家さんの負担になるから」という理由で礼金を求めている場合、その根拠を確認する必要があります。国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、通常損耗(経年劣化や通常の使用による損耗)は、家賃に含まれるものとされています。つまり、犬が原因で発生した特別な損害(例えば、柱に引っかき傷をつけたなど)以外は、大家さんが負担するべきものなのです。
「管理会社としては犬嫌い」という発言は、プロとしていかがなものでしょうか。感情的な理由で初期費用を上乗せすることは、正当な理由とは言えません。管理会社は、大家さんの代理として、客観的かつ合理的に判断する義務があります。
管理会社が「退去費用がない」と言っている点も疑問です。ガイドラインに沿った原状回復義務はありますが、犬による特別な損害があれば、借主が負担する必要があります。そのため、敷金を預かることは、大家さんにとってもリスクヘッジになるはずです。
今回のケースでは、以下の点を交渉してみる余地があります。
初期費用の内訳の明確化: 礼金として支払う金額が、具体的にどのような費用に充当されるのか、内訳を明確にしてもらいましょう。
敷金への変更: 礼金ではなく、敷金として預けることを提案してみましょう。その際、退去時の修繕費用は、ガイドラインに沿って精算することを約束します。
ペット保険への加入: 犬が原因で発生した損害をカバーするために、ペット保険への加入を検討してみましょう。保険に加入することで、大家さんの不安を軽減できる可能性があります。
専門家への相談: 不動産に詳しい弁護士や、消費者センターなどに相談してみるのも有効です。専門家のアドバイスを受けることで、冷静に判断することができます。
感情的にならない: 礼金や敷金について納得がいかない場合でも、感情的に反論することは避けましょう。冷静に、論理的に交渉することが大切です。
書面でのやり取り: 口頭での約束は、後々トラブルになる可能性があります。交渉の内容は、必ず書面に残すようにしましょう。
第三者の意見を参考にする: 自分だけで判断せず、家族や友人、専門家など、信頼できる第三者の意見を参考にしましょう。
契約書には、ペット飼育に関する特約が記載されている場合があります。特約の内容をよく確認し、不明な点があれば、必ず管理会社に質問しましょう。特に、退去時の修繕費用に関する条項は、しっかりと確認しておくことが重要です。
ペットとの暮らしは、私たちに癒しと喜びを与えてくれます。今回のケースでは、初期費用について納得のいかない点があるようですが、冷静に交渉することで、愛犬との幸せな生活を実現できるはずです。
今回の記事が、少しでもお役に立てれば幸いです。