引越しは人間だけでなく、犬にとっても大きなストレスとなることがあります。新しい環境に慣れるまでの間、犬が元気をなくしたり、食欲が減退したりするのは、決して珍しいことではありません。今回は、引越しが犬に与える影響と、その対策について詳しく解説します。
犬は、その生活環境の変化に非常に敏感です。特に、以下のような要素が犬にストレスを与え、体調や精神面に影響を及ぼす可能性があります。
縄張りの喪失:犬にとって、住み慣れた家は自分の縄張りです。引越しによってその縄張りを失うことは、大きな不安につながります。
見慣れない環境:新しい家、新しい匂い、新しい音など、すべてが犬にとっては未知のものです。警戒心が強い犬ほど、ストレスを感じやすいでしょう。
飼い主の不安:犬は飼い主の感情を敏感に察知します。引越し準備で飼い主が慌ただしくしていたり、不安を感じていたりすると、犬も同じように不安になることがあります。
生活リズムの変化:引越しに伴い、散歩の時間や食事の時間など、犬の生活リズムが大きく変わることがあります。これもストレスの原因となります。
引越しによるストレスが原因で、犬は以下のようなサインを示すことがあります。これらのサインにいち早く気づき、適切な対応をすることが大切です。
食欲不振:普段は喜んで食べるご飯を残したり、全く食べなくなったりすることがあります。
元気がない:いつもは活発な犬が、ぐったりとして動かなくなったり、散歩を嫌がるようになったりすることがあります。
下痢や嘔吐:ストレスが原因で、消化器系の不調を引き起こすことがあります。
吠え続ける:不安や警戒心から、普段よりも多く吠えることがあります。
破壊行動:家具や物を噛み壊すなど、破壊的な行動をすることがあります。
過剰なグルーミング:体を舐め続ける、自分の毛をむしるなどの行為が見られることがあります。
分離不安:飼い主と離れることに強い不安を感じ、後追いしたり、鳴き続けたりすることがあります。
落ち着きがない:そわそわと歩き回ったり、同じ場所をぐるぐると回ったりすることがあります。
攻撃性の増加:普段は大人しい犬が、攻撃的な態度をとることがあります。
これらのサインが見られた場合は、獣医さんに相談し、適切なアドバイスを受けることをおすすめします。
愛犬が新しい環境にスムーズに慣れるためには、飼い主のサポートが不可欠です。以下の対策を参考に、愛犬が安心して過ごせるように工夫しましょう。
事前に新居の情報を収集する
新居周辺の環境(騒音、交通量、他の犬の有無など)を事前に把握しておきましょう。可能であれば、引越し前に一度愛犬を連れて新居周辺を散歩してみるのも良いでしょう。
引越し業者にペットがいることを伝える
引越し業者にペットがいることを伝え、運搬方法や時間帯などについて相談しましょう。ペットに配慮した運搬をしてくれる業者を選ぶと安心です。
愛犬の持ち物を準備する
愛犬が普段使っているベッド、毛布、おもちゃ、食器などを事前に準備しておきましょう。これらの物を新居に持ち込むことで、愛犬は安心感を得やすくなります。
愛犬を安全な場所に預ける
引越し当日は、愛犬を安全な場所に預けるのが理想的です。友人や親戚に預ける、ペットホテルを利用するなど、愛犬が落ち着いて過ごせる場所を選びましょう。どうしても預けられない場合は、ケージに入れて、静かな場所に置いてあげてください。
新居に愛犬のスペースを作る
新居に着いたら、まず愛犬のスペースを作りましょう。クレートやケージを設置し、愛犬が安心できる場所を確保します。普段使っているベッドや毛布、おもちゃなどを置き、愛犬が落ち着けるように工夫しましょう。
落ち着いた態度で接する
飼い主が落ち着いていれば、愛犬も安心します。不安な気持ちを悟られないように、普段と変わらない態度で接しましょう。
新居に慣れさせる
最初は、新居の中を自由に探検させてあげましょう。新しい匂いを嗅いだり、新しい場所に慣れたりする時間を与えます。
積極的にコミュニケーションをとる
たくさん話しかけたり、撫でてあげたりして、積極的にコミュニケーションをとりましょう。愛犬が安心できるように、愛情をたっぷり注いであげてください。
散歩コースを決める
新居周辺の散歩コースを決めましょう。毎日同じコースを散歩することで、愛犬は新しい環境に慣れやすくなります。他の犬や人に会う機会を設け、社会性を育むことも大切です。
生活リズムを整える
食事の時間や散歩の時間など、できるだけ引越し前と同じ生活リズムを保つようにしましょう。規則正しい生活を送ることで、愛犬のストレスを軽減することができます。
新しい環境でのルールを教える
新居でのルールを教えましょう。例えば、入ってはいけない場所、粗相をしてはいけない場所などを教えます。根気強く教えることで、愛犬は新しい環境でのルールを理解し、安心して過ごせるようになります。
獣医さんに相談する
引越し後、愛犬の様子がおかしいと感じたら、早めに獣医さんに相談しましょう。獣医さんは、愛犬の健康状態をチェックし、適切なアドバイスをしてくれます。
犬のフェイシャルフェロモンF3は、犬が安心感を得るために分泌する物質です。このフェロモンを模倣した製品(スプレーやディフューザーなど)を使用することで、犬の不安を軽減し、新しい環境への適応をサポートすることができます。
引越しによるストレスで食欲が落ちている場合は、消化の良い食事を与えたり、食欲増進効果のあるサプリメントを試したりするのも良いでしょう。獣医さんに相談して、愛犬に合ったサプリメントや食事を選んでもらいましょう。
上記のような対策を講じても、愛犬のストレスが改善されない場合は、ドッグトレーナーや行動学の専門家などに相談してみるのも良いでしょう。専門家は、犬の行動や心理を深く理解しており、個別の状況に合わせたアドバイスをしてくれます。
Aさんの愛犬、チワワのチーちゃん(5歳)は、とても臆病な性格。引越しの数日前から、Aさんの様子を敏感に察知し、落ち着きをなくしていました。引越し当日、チーちゃんはAさんの実家に預けられましたが、慣れない場所に不安を感じ、一日中震えていたそうです。
新居に到着後、Aさんはまずチーちゃんのスペースを確保し、普段使っているベッドや毛布を置きました。しかし、チーちゃんはなかなか落ち着かず、夜鳴きが続きました。
Aさんは、獣医さんに相談し、フェロモン製品の使用を勧められました。また、チーちゃんが安心できるように、たくさん話しかけたり、抱っこしてあげたりしました。
数日後、チーちゃんは少しずつ新しい環境に慣れ始め、夜鳴きも減っていきました。Aさんは、毎日チーちゃんと一緒に散歩に出かけ、新しい公園やドッグランに連れて行きました。
1ヶ月後、チーちゃんはすっかり新しい環境に慣れ、以前と変わらない笑顔を見せてくれるようになりました。Aさんは、「チーちゃんが安心して暮らせるように、これからも愛情をたっぷり注いであげたい」と話しています。
引越しは犬にとって大きなストレスとなり得ますが、適切な対策を講じることで、愛犬が新しい環境にスムーズに慣れることができます。引越し前から準備を始め、引越し当日は愛犬を安全な場所に預け、引越し後は積極的にコミュニケーションをとり、生活リズムを整えることが大切です。
もし、愛犬の様子がおかしいと感じたら、早めに獣医さんに相談しましょう。獣医さんは、愛犬の健康状態をチェックし、適切なアドバイスをしてくれます。
愛犬が新しい環境で安心して暮らせるように、飼い主としてできる限りのサポートをしてあげましょう。