退去時の費用負担、特にペットと暮らした賃貸物件では、誰もが直面する不安ですよね。
この記事では、15年間ペット可の戸建てに住んだ方が、退去時に高額な請求をされないか心配しているケースを基に、経年劣化やペットによる損耗を考慮した上で、どこまでが借主の負担になるのかを具体的に解説します。
大家さんとの交渉術や、万が一トラブルになった際の対処法についてもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
15年間賃貸していましたが、更新したのは1回のみで、それも不思議に思っています。
仲介してくれた不動産会社は、契約が更新されていないから関係ないと言っていますが、台所の水漏れやドアの修理などは業者を手配してくれました。
当時の契約では犬の飼育が可能でしたが、私の前に猫を飼っていた方がいたので、「猫も良いんですね?」と聞いたら、亡くなられた大家さんがうなずかれたので、その後、猫を飼育したら、柱やふすま、引き戸全て崩壊してしまいました。
敷金3ヶ月分の18万円は諦めていますが、それ以上の多額の請求をされそうで不安です。
引っ越すと伝えると、大家さんの親戚が大工なので、そちらでリフォームする予定だと聞きました。
15年住んだ経年劣化はどの程度適用されるでしょうか?
例えば、柱や壊した引き戸やフローリングは致し方ないとしても、畳やクロスは何%免除されるでしょうか?
アドバイスをお願いします。
今回のケースは、ペット可の戸建て賃貸に15年住んだ方が、退去時に発生する費用について不安を感じているというもの。
特に、ペット(猫)による損耗と、経年劣化が混在している点が複雑です。
この状況を整理し、借主が知っておくべきポイントを解説していきます。
賃貸物件の退去時、借主は「原状回復義務」を負います。
しかし、これは文字通り借りた時の状態に戻すという意味ではありません。
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によると、経年劣化や通常の使用による損耗は、家賃に含まれていると考えられています。
つまり、15年という長期間の居住による自然な劣化は、借主が負担する必要はないのです。
経年劣化:日焼けによるクロスの変色、家具の設置による床のへこみなど
通常損耗:生活していれば自然に発生する程度の汚れや傷
今回のケースで問題となるのは、猫による損耗です。
柱やふすま、引き戸の崩壊は、通常の使用による損耗とは言えません。
この場合、借主は原状回復義務を負うことになります。
しかし、ここで重要なのは、損害の程度と、修繕費用の妥当性です。
損害の程度:本当に修繕が必要なレベルなのか、一部の補修で済むのか
修繕費用の妥当性:大家さんの親戚の大工に見積もりを依頼するとのことですが、相場からかけ離れていないか
建物の設備や内装は、年数が経つにつれて価値が下がります。
これを減価償却と言います。
例えば、クロスや畳の耐用年数は一般的に6年とされています。
15年住んでいる場合、これらの価値はほぼゼロとみなされる可能性が高いです。
つまり、クロスの張り替え費用を全額負担する必要はないということです。
契約書に特約条項がないか確認しましょう。
例えば、「ペットによる損害は全額借主負担」といった内容が記載されている場合、その条項が有効かどうかを検討する必要があります。
消費者契約法に照らし合わせて、借主に一方的に不利な条項は無効となる場合もあります。
1. 証拠の確保
入居時の写真:入居時からあった傷や汚れを記録しておきましょう。
猫による損害の写真:損害の程度を客観的に示すために、詳細な写真を撮っておきましょう。
大家さんとのやり取りの記録:口頭での約束や交渉内容を記録しておきましょう。
2. 相見積もりの取得
大家さんの提示する見積もりだけでなく、複数の業者から見積もりを取りましょう。
修繕費用の相場を知り、不当な請求を防ぎましょう。
3. 専門家への相談
不動産に詳しい弁護士や、消費者センターなどに相談しましょう。
専門家のアドバイスを受けることで、法的に有利な立場を確保できます。
4. 交渉のポイント
経年劣化による損耗は負担しないことを明確に伝えましょう。
ペットによる損害については、誠意をもって対応する姿勢を示しましょう。
修繕費用の分割払いや、敷金からの相殺などを交渉してみましょう。
過去の事例では、同様のケースで、弁護士に相談した結果、大家さんとの交渉がスムーズに進み、当初の請求額から大幅に減額されたケースがあります。
Aさんは、ペット可のマンションに10年住んでいましたが、退去時に高額な修繕費用を請求されました。
しかし、弁護士が介入し、経年劣化による損耗を考慮した上で、適切な費用を算出した結果、Aさんは当初の請求額の3割程度の金額で済んだそうです。
不動産鑑定士のBさんは、「ペット可物件の退去トラブルは年々増加しています。
契約時にしっかりと内容を確認し、入居中も定期的に写真を撮るなど、証拠を残しておくことが重要です。
また、退去時には、必ず立会いを行い、損害の程度を明確にすることが大切です」と語ります。
ペットと暮らす賃貸物件の退去は、何かと不安がつきものですが、正しい知識と準備があれば、高額な請求を避けることができます。
今回のケースでは、経年劣化とペットによる損耗を明確に区別し、適切な費用負担を交渉することが重要です。
もし、大家さんとの交渉が難航する場合は、専門家への相談も検討しましょう。
賢く交渉して、納得のいく退去を実現してください。